白頭翁湯煎剤はマウスのDSS誘発性大腸炎を軽減する

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漢方は2000年以上の臨床経験に基づく根拠がありますが、現在、中国では漢方におけるEBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)の導入が積極的に進められています。欧米を中心に中医薬の導入が進んでおり、その中でEBMによる科学的裏付けのある処方が西洋医学との連携や国際標準化のために歓迎されているという背景があります。

2025年7月31日に信頼の高い科学誌、BMCに「白頭翁湯煎剤はマウスのDSS誘発性大腸炎を軽減する」という論文が掲載され、動物実験において潰瘍性大腸炎の病態モデルとして広く使われるDSSモデルにおいて白頭翁湯が粘膜炎症・出血・腫脹を抑制したことが報告されています。以下、抜粋してご紹介します。

潰瘍性大腸炎は大腸に構造を形成する炎症性疾患の一種である。『傷寒論』に由来する白頭翁湯は、2000年以上にわたり潰瘍性大腸炎の治療に臨床で用いられてきた。先行研究では、大腸炎マウスにおける白頭翁湯の腸内細菌叢に対する調節作用が明らかにされたが、明確な作用機序はまだ不明である。本研究は、大腸炎に対する白頭翁湯の治療効果における腸内細菌叢と宿主免疫の間のクロストークを調査することを目的とした。

飲料水にデキストラン硫酸ナトリウムを加えたマウスの大腸炎モデルに白頭翁湯を投与したところ、大腸炎マウスの結腸損傷を改善し、腸内細菌叢の異常を再調整することができた。糞便微生物叢移植実験で白頭翁湯の治療効果が腸内細菌叢に依存することが確証された。

研究の結果から、白頭翁湯が腸内微生物叢と代謝の恒常性を調節することにより、腸管上皮細胞の壊死を抑制して大腸炎を軽減する可能性を示唆している。

白頭翁湯は中国の古典医学書『傷寒論』に記載されている処方の一つで、主に熱性の下痢や赤痢に使われます。このユニークな名前には、昔ある村に疫病が広がったとき、村にやってきた白髪の老人が草を煎じて飲ませたところ次々と回復したので、人々はこの草を白頭翁と呼び大切にしたという昔話があります。

2010 年から 2019年にかけて、日本における潰瘍性大腸炎の有病率は10万人あたり約5人から98人となり、発症率は10倍に増加しています。脂肪や糖質、加工食品の摂りすぎや環境汚染、過度な清潔志向などが要因として指摘されていますが、原因が不明で再燃しやすく、個人差が大きいことに治療の難しさがあります。漢方薬や補完療法との併用研究も進められていることから、今回の研究は臨床への応用が期待されます。

<参照>
■Hong Shen et al, Baitouweng decoction modulates gut microbial production of indole-3-propionic acid and epithelial necroptosis to alleviate DSS-induced colitis in mice, BMC, Published: 31 July 2025, Chinese Medicine volume 20, Article number: 119 (2025)