夏の採卵は凍結胚移植に有利


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採卵時の季節が凍結胚移植における出生率に影響するという興味深い報告がありましたのでご紹介します。

オーストラリアの研究チームは、2013年から8年間にわたる1835人の患者の3659件の凍結胚移植を後ろ向きに検討し、秋に採取した卵子と比較して、夏に採取した卵子からの凍結胚移植では、胚移植当日の条件とは無関係に、生児誕生の確率が30%増加することを発表しました。

同チームは、季節または環境条件は子宮の受容性や妊娠初期の発達ではなく、卵母細胞の成熟とその後の胚の能力、及び出生率に影響を与えることを示唆していると議論しています。

ただ、夏の採卵が生児出生率を高めるための選択肢となる可能性が示唆される一方で、卵巣予備能の低下が進んでいる患者でもあてはまるのか、季節や環境が精子に与える影響、季節ごとの食事やライフスタイルの違い、汚染物質などの他の環境要因等が影響した可能性は不明なため、さらなる調査が必要であることも同チームは述べています。

とはいえ、これまでは胚移植時の季節や気候条件を検討する研究がほとんどで、胚移植時の気温や季節は影響しなかったと報告されている中で、採卵時における季節や環境の影響について検討する研究は有用であると思います。

<参照>
■S J Leathersich et al., Season at the time of oocyte collection and frozen embryo transfer outcomes, Human Reproduction, Published: 05 July 2023