ニュージーランドの代名詞ともいえるキウイは、11月ころから国産のものも出回りはじめます。ビタミンCが多いことから美肌の果物として人気ですが、英国栄養士会が新たに作成した食事ガイドラインで「薬に頼らずに慢性便秘を管理するのにキウイが役立つ可能性がある」と掲載されたことで、さらに注目が高まりそうです。
キウイには便の量を増やし、大腸のぜん動運動を促す不溶性食物繊維と便を柔らかくして滑りやすくする水溶性食物繊維が含まれます。また、タンパク質分解酵素のアクチニジンが肉などのタンパク質の消化を促し、胃腸の負担が軽減されます。
ガイドラインを作成したキングス・カレッジ・ロンドンのイリーニ・ディミディ准教授は「高繊維食は腸の健康に非常に有益であるというエビデンスは複数あるが、便秘を改善すると断言できるほどの十分なエビデンスは存在しない」と語りながらも、「このガイドラインは、『食物繊維や水の摂取量を増やしましょう』というような漠然とした既存の助言を、より具体的で研究に裏打ちされた助言に置き換えることを目的としている」と述べています。ガイドラインでは、キウイ以外にもライ麦パンやプロバイオティクス、ミネラル豊富な水も推奨されており、自分で試す際の参考になります。
東洋医学では、便秘を単に便が出ない状態ではなく、体全体の気血水のバランスが崩れた結果と考えます。ですから、体のバランスを整える際に、一人ひとりの体質に合った治療法を選択します。
例えば、胃腸に熱がこもり、水分が奪われる「熱秘」には胃腸の余分な熱を冷まし、便を出しやすくする、ストレスや気の滞りで起こる「気秘」にはストレスによる気の滞りを解消し、腸の緊張を緩める、身体が弱くて気血不足の「虚秘」には気血や潤いを補い、便を滑らかにする、冷えにより腸の働きが鈍くなる「寒秘」には体を温めるように働きかけます。
薬膳的に、キウイには熱を冷まし、潤いを補う清熱生津と、胃腸の働きを整えて気をめぐらせる健胃理気の働きがありますので、「熱秘」や「気秘」にはよいかもしれませんが、「寒秘」には様子を見ながら調整していくていねいさが必要です。
科学的エビデンスに基づいた情報は健康維持にとって有用ですが、「○○には△△が効く」という単純なことではありません。参考にしつつ、ご自身に合ったものを都度選択することが、手間のかかることではありますが、養生の基本的な姿勢であると考えます。
<参照>
■Eirini Dimidi et al., British Dietetic Association Guidelines for the Dietary Management of Chronic Constipation in Adults, First published: 13 October 2025 https://doi.org/10.1111/jhn.70133

