胚移植後の注意事項


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2022年4月に体外受精や顕微授精を含む不妊治療が保険適用となって以降、不妊治療への一般的な認知は高くなりました。ですから、体外受精を行う場合、男性と女性の両方において詳細なチェックが行われ、排卵誘発剤を用いて卵子を発育させて採卵。その後、培養した良好胚を移植し、妊娠判定が行われるということを知識としてご存じの方は少なくありません。とはいえ、全体で1~2カ月ほどかかる不妊治療を実際に行うのは、当事者となるまでなかなか実感できないほど大変なことです。

胚移植後に気をつけて頂きたいことが3つあります。

第一に、移植後は着床を助けるために黄体補充療法を行いますので、医師の指示に従って薬を忘れずに服用してください。

第二に、移植後はリラックスを保ちます。妊娠率を高めるために慎重になりすぎる方がおられますが、安静にすることで妊娠率が上がることはありません。移植後の数時間を横になって過ごせば十分で、その後は通常通りの生活をして問題ありません。不安感は妊娠率に一定の影響を与えると考えられ、体外受精を受ける女性の約20~30%が不安障害を経験しているという研究もあります。映画を見たり、音楽を聞いたり、屋外活動をしたりして気分転換をすることが重要です。

第三は、便秘や下痢を防ぐことです。排便トラブルは子宮収縮の原因になることがあります。食物繊維が多い食品を摂取し、辛いものや脂っぽいものなど刺激が強い食事は控えてください。

薬の服用はすぐにできますが、リラックスとお通じの改善はいわれてすぐにできることではありません。ですから、治療を行う前に、ご自身が快適に過ごせる場所や気分転換の方法を把握し、便秘や下痢にならないような生活習慣を整えておくことが大事です。最新医療であっても、その力を十分に発揮するカギは患者さん自身が行う準備にあります。積み重ねられた努力が実を結ぶことを願っています。