胚着床に必須の栄養素 亜鉛


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妊娠したものの流産、死産を2回以上繰り返す状態を不育症といい、約半数は原因が特定できないとされることから母体環境を整える重要性がますます注目されています。

麻布大学と徳島文理大学の研究チームがマウスとマウス・ヒト子宮内膜細胞を用いて、胚着床には子宮内膜細胞への亜鉛の取り込みが必須であることを報告しています。

・子宮内膜細胞で亜鉛輸送体ZIP10遺伝子を欠損したマウスでは、胚が子宮内膜に浸潤できない着床不全となり、結果として不妊となることが明らかになりました。

・亜鉛輸送体ZIP10遺伝子を欠損したマウスでは、子宮の細胞で亜鉛の取り込みが障害され、妊娠維持に重要なプロゲステロンのシグナル伝達を行えないことが明らかになりました。

・培養細胞を用いた研究から、マウスだけでなくヒトにおいても子宮内膜細胞内の亜鉛イオンがホルモン応答に重要なことを明らかにし、亜鉛が妊娠の成立と維持に欠かせない理由を分子レベルで解明しました。

大学プレスセンター「【麻布大学】不育症の原因に亜鉛が関与〜妊娠の成立には子宮内膜の亜鉛が重要である〜」より引用

亜鉛はエネルギー代謝やタンパク質合成、免疫反応などに関係します。成人女性は一日当たり8mg、妊婦は10mg、授乳婦は12mgを摂取することが推奨されていますが、2018年の国民健康・栄養調査では足りていないことが報告されています。


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私は常々、子宝を望まれる方にはナツメをおすすめしていますが、亜鉛の補給にもナツメは適しています。

ナツメは妊婦さんに必須の鉄と葉酸も多く含みます。中国では多くの女性が気血を増やし、こころをおだやかにするナツメを常食しています。お菓子や料理に使うことができ、ナツメチップやナツメ茶など手軽にとることができるのもよいです。

イラン、イラク、米国の研究者からなる研究チームが、子宮腔癒着症(IUA)のラットモデルにおいて、ナツメが生殖能力と妊娠結果を促進することを示す論文もご紹介していますので、ぜひあわせてご参照ください。

<参照>
■Yui Kawata et al., Endometrial zinc transporter Slc39a10/Zip10 is indispensable for progesterone responsiveness and successful pregnancy in mice, PNAS Nexus, Volume 4, Issue 2, February 2025, pgaf047, https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf047, Published: 10 February 2025