アサガオが咲くために必要なもの


Photo by 白わんこ

涼やかに咲くアサガオは夏の暑さを一時、忘れさせてくれる存在です。

アサガオは夏の朝に咲くので、明るくなるから咲くと思われがちですが、実はそうではなく、夕方に太陽が沈んでアサガオが暗闇を感じてから約10時間後にツボミが開くそうです。つまり、アサガオが夏の朝に咲くのは、暗くなってから約10時間後がたまたま朝だからということです。

この証明として、田中修先生は著書、『都会の花と木』の中である実験を紹介しています。

アサガオに暗黒を与え始めたら、10時間後には真っ暗の中でもアサガオのツボミは開き始めます。そして、「もし10時間の暗黒がなければアサガオのツボミは開かないのか」を確かめるために、アサガオを電灯をつけっぱなしにして育てると、日が経つにつれてツボミはどんどん大きくなり、開花直前の大きさにはなるけれども、そのツボミが開くことはない、とのことです。

これを田中先生はこう表現しています。

言い方を換えれば、朝に開く(アサガオの)ツボミは、開花前に約10時間の暗黒を必要としているのだ。

含蓄の深い言葉だと思います。最近は、とかく効率化が重視され、少しでも早く「結果」を出せと急かされます。しかし、何か大きなことを成そうと思うなら、ていねいに時間と手間をかける必要があります。「健やかな体をつくる」のも、一朝一夕にはできません。毎日の積み重ねが体と心を作っているということを、アサガオの花に改めて気づかされたように思います。

<参照>
■田中修、『都会の花と木―四季を彩る植物のはなし』、中公新書

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