中国に限らず、タンポポは世界各地の伝統医学で2型糖尿病の治療に使われてきました。近年は西洋医学においてもタンポポの抗高血糖作用、抗酸化作用、抗炎症作用により重要な抗糖尿病植物と考えられており、研究が多く行われています。
これまでもタンポポと2型糖尿病の治療および予防における可能性を示唆する論文をご紹介していますが、今回はストレプトゾトシン糖尿病誘発性肝腎毒性および脂質異常症のラットモデルにおけるタンポポの抗肝障害および抗腎障害活性についての論文を要約してご紹介します。
高血糖を放置すると神経や血管、組織、臓器に深刻な害を及ぼすおそれがある。肝臓は糖尿病の影響を受けやすい臓器のひとつであり、糖尿病は慢性肝疾患の進行に重大なリスクをもたらす。また、糖尿病の最も有害な微小血管障害のひとつである糖尿病性腎症に使われる薬は、重篤な副作用があったり、治療効果が乏しかったりと、非常に効果的な選択肢がない。
この研究では、ストレプトゾトシン糖尿病誘発性肝腎毒性におけるタンポポの作用を調査するために、60匹のラットを各10匹ずつA~Fまで6つのグループに無作為に分けた。グループAは正常コントロール、グループBはタンポポで治療したグループ、グループCは糖尿病ネガティブコントロール、グループDはタンポポで治療した糖尿病ラットのグループ、グループEはメトホルミンで治療した糖尿病ラットのグループ、グループFはストレプトゾトシン糖尿病後にタンポポで治療したグループである。
血清脂質プロファイル、ALT、AST他や肝臓および腎臓の組織を調査したところ、タンポポによる治療は糖尿病ラットのすべての電解質異常を改善し、タンポポおよびタンポポ+メトホルミンによる治療は糖尿病ラットの炎症マーカーと抗酸化酵素を回復させ、肝臓および腎臓の組織的損傷を防いだ。肝腎毒性はタンポポによって効果的に緩和された。
ストレプトゾトシン糖尿病誘発ラットをタンポポで治療し、タンポポ+メトホルミンを併用治療すると、腎組織の組織病理学的損傷が大幅に回復した。これはタンポポの抗炎症、抗アポトーシス、抗酸化特性によってもたらされた可能性がある。
今回の研究結果は、タンポポが糖尿病とその代謝産物が腎臓と肝臓の組織に引き起こす損傷を防ぐための効果的な天然ハーブ療法として使用できる可能性があることを示唆している。
私はタンポポの葉から抽出したT-1という糖鎖を長年研究しており、動物実験においてT-1が毛細血管の血流循環を改善することを確認しています。糖尿病は毛細血管にダメージを与えるので、これらがたくさん集まるところ、例えば肝臓や腎臓などに影響が出やすいです。T-1は臨床でも用いられており、この論文もエビデンスのひとつとして参考になると思います。
<参照>
■Sunday Aderemi Adelakun et al., Anti-hepatopathy and anti-nephropathy activities of Taraxacum officinale in a rat model of Streptozotocin diabetes-induced hepatorenal toxicity and dyslipidemia via attenuation of oxidative stress, inflammation, apoptosis, electrolyte imbalances, and mitochondrial dysfunction, Aspects of Molecular Medicine Volume 3, June 2024, 100034, https://doi.org/10.1016/j.amolm.2024.100034