トルタ・デッラノンナという焼き菓子をご存じですか。
「おばあちゃんのタルト」という意味で、ルネサンスの保護者として知られるメディチの家のサロンで、体と心をいやすことを願って作られたと言われています。
今では伝統的なイタリア菓子のひとつであるトルタ・デッラノンナにはナッツやベリーがたくさん入っていますが、このタルトに欠かせないのが松の実です。
松の実に多く含まれる油は栄養源として優れており、中国では昔から仙人が食べる長寿の食材とされます。
松の実は生薬としても用いられ、精力を養うので冷え症や体が弱い人に使います。潤腸通便といって、腸を潤し、便通を促す働きがあるので、産後など体力が落ちたときの便秘によいです。
また、皮膚を潤して艶やかにし、白い肌を作るので美容にもよいです。赤松の実は心臓の妙薬といわれます。他の生薬とも相性がよく、補血・安神作用があるナツメと一緒に食べるとこころが落ち着きます。
ルネサンスの保護者として知られるメディチの家名はメディシン、すなわち「薬」や「医者」を意味し、もともとは医学や薬と関係があったのではないかと言われています。
同家に伝わる健康を願って作られるトルタ・デッラノンナに松の実が欠かせないのは、松の実の働きをよく知っていたからかもしれません。