ジャガイモの発芽には有毒物質が必要


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スーパーで新ジャガを見かけるころになりました。
皮ごと味わえるみずみずしい新ジャガは、煮ても、焼いても、揚げても間違いないおいしさです。

ただ、ジャガイモは調理の際に注意が必要です。
表面が緑色になったところや芽のあたりにはソラニンやチャコニンという毒があり、吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。

農林水産省の報告によると、これらは沸騰したお湯で150分茹でても、150℃の油で5分揚げてもほとんど分解されず、210℃で10分間揚げてようやく半分になりました。
ですので、表面が緑色のところや芽の周辺は取り去らなければいけません。

ところが、2019年に遺伝子操作技術で有毒な物質ができないジャガイモが作られました。
しかも、このジャガイモは長く貯蔵しても芽が出ないという特徴がありました。

『植物はなぜ毒があるのか』では「有毒な物質はジャガイモが芽を出すために必要なのかもしれない」と書かれています。
有毒な物質は動物に食べられないように体を守るための物質で、それが作られないと芽が食べられるリスクが高まるからです。

毒性がなく、芽が出ないジャガイモは、消費する立場から言えば、とても便利です。

しかし、そのような不自然なものを常食することへの不安感はぬぐえません。
そして、今はほとんどの方がジャガイモの芽は食べてはいけないということを知っていますが、便利さになれてそのことを忘れてしまい、普通のジャガイモで食中毒を起こしてしまうことも考えられます。

便利さの陰で生活の様々な知恵が失われつつあるという一面を、快適な生活を送れる今こそ折に触れて意識する必要があるのではないかと思います。

<参照>
■田中修 丹治邦和、『植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略』、幻冬舎

ジャガイモによる食中毒を予防するために、農林水産省