『The New England Journal of Medicine』 生殖補助医療におけるリスクについて


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『The New England Journal of Medicine』に掲載された生殖補助医療に関連するレポートを紹介します。

1)生殖補助医療による妊娠で出生した児における癌のリスク

Carrie L. Williamsさんたちのグループは、生殖補助医療で出生した児における癌の発生率を調べるために、英国で15 歳までに癌を発症した児の数を特定して潜在的因子の層別化を行い、生殖補助医療で出生した約10万6千例で構成されたコホートにおける癌発生率を人口ベースの発生率と比較しました。

17 年の調査期間中、生殖補助医療で出生した児に癌全体のリスク上昇は認められませんでした。肝芽腫と横紋筋肉腫ではリスク上昇が認められましたが、絶対リスクは小さいものでした。肝芽腫の過剰リスクは低出生体重と関連しました。

2)生殖医療技術と先天異常のリスク

Michael J. Daviesさんたちのグループは、南オーストラリア州における先天異常のリスクを、生殖補助医療技術による妊娠、以前に生殖補助医療を受けた女性の自然妊娠、不妊症の記録があるが生殖補助医療技術による治療を受けていない女性の妊娠、不妊症の記録がない女性の妊娠で比較しました。

IVF に関連する先天異常のリスクは、補正すると有意ではありませんでした。ICSI に関連する先天異常のリスクは補正後も高いままでしたが、別の変数が関与している可能性を排除できないと論文では結論しています。

3)体外受精後の累積生児獲得率

Beth A. Maliziaさんたちのグループは5年間にわたって単一の大規模施設で初回新鮮胚、非ドナー、IVF周期の治療を受けた患者の累積生児獲得率を調べました。

14,248周期を施行した6,164 例において、6周期後の累積生児獲得率は72%でした。これは通院を途中でやめた患者も治療を継続した患者同様に生児出産につながる妊娠の可能性があると仮定した楽観的な解析においての数値です。

これを年齢別に見ると、35歳未満の患者では86%であったのに対し、40 歳以上の患者では42%で、累積生児獲得率は年齢の上昇とともに低下しました。研究グループは「今回の結果から、IVFにより若年女性の不妊症の大部分を克服できる可能性はあるが、妊娠率の年齢依存的な低下を逆転することはできないことが示された」と結論付けています。

<参照>
■Carrie L. Williams et al., Cancer Risk among Children Born after Assisted Conception, November 7, 2013, N Engl J Med 2013; 369:1819-1827, DOI: 10.1056/NEJMoa1301675
■Michael J. Davies et al., Reproductive Technologies and the Risk of Birth Defects, May 10, 2012, N Engl J Med 2012; 366:1803-1813, DOI: 10.1056/NEJMoa1008095
List of authors.
■Beth A. Malizia et al., Cumulative Live-Birth Rates after In Vitro Fertilization, January 15, 2009, N Engl J Med 2009; 360:236-243, DOI: 10.1056/NEJMoa0803072