ロボットとAIによる体外受精で初の生児出産

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米国などを拠点とするバイオ企業、Conceivable Life Sciences社がロボットとAIによる遠隔地からの操作で、精子の選択や固定化を含む顕微授精の約半分の過程を行い、凍結胚から健康な赤ちゃんが誕生したことを報告しました。

現時点では、まだこの治療に関わるのに従来以上のスタッフを必要とし、熟練の胚培養士なら1分ほどで終える顕微授精に約10分かかります。また、完全に自律的なシステムとなっても、現場では人による監督が必要で、高速インターネット接続のトラブルがどう影響するかも未知数です。

とはいえ、高度な不妊治療を受けられる医療機関、医師、培養士の数は全国に均等に分布しているわけではなく、都市部と地方の格差が大きいため、保険適用後は、特に地方では患者が集中して予約が取りづらい状況です。そして、顕微授精は胚培養士の知識と熟練度に大きく依存しており、ヒトが行うことですから疲労やストレスなどの日々の影響も避けられません。

AIやロボット工学を組み合わせて自動で受精を成立させることが視野に入ってきたことで、技術革新の早い不妊治療においても大きなブレイクスルーとなる可能性があります。患者さんにとってよりよい選択肢となりうるのか、今後の進展が注目されます。

<参照>
■Jacques Cohen et al., A digitally controlled, remotely operated ICSI system: case report of the first live birth, ArticleArticles in Press104943April 09, 2025Open access
■古川雅子、病院も胚培養士も足りない――不妊治療、都市部と地方の格差をどう埋める?、2025/2/21、Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部