【BOOK】『家康さまの薬師』

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薬師を目指す瑠璃という少女が主人公の『家康さまの薬師』

「薬の知識や製剤・調合の技術は素人の域をはるかに超える」と言われる徳川家康の薬師ですから、相当な実力がないと務まらないと思いますが、師匠からもらい受けた本草学の本を暗記するほど読み込む瑠璃が得意なのは、その人の身体の調子に合うお茶を用意することです。

瑠璃が家康のために初めて入れたお茶には、ゴボウと山芋、ナツメ、ミカンの皮が入っていました。家康が今川家に人質となっていた頃で、気持ちが塞ぎがちで鬱々としていた家康に、便通によいゴボウと気力を養う山芋、気を落ち着かせるナツメ、気をめぐらせるミカンの皮を用意しました。

家康と瀬名に初めての子どもが生まれたとき、産後、食が細くなって青白い顔色をしている瀬名に瑠璃が用意したお茶には、血の道に効くナツメとクコ、そして阿膠(あきょう)が入っていました。ナツメとクコは出産後の血虚によいとされ、阿膠には血を補う働きがあります。

瑠璃のお茶を飲む人は、みな「おいしい」と気に入ります。身体が必要としているものは自然とおいしく感じるのでしょう。毎日飲むお茶に、体調に合わせて生薬を合わせるのは健康維持にとてもよい方法です。

今の時期でしたら咳に悩まれている方が多いので、緑茶に乾燥させたキンモクセイの花と麦門冬を入れたものがおすすめです。
皆さんも、ぜひいろいろな健康茶を試してみてください。

<参照>
■鷹井伶、『家康さまの薬師』、潮出版社