【BOOK】『ママ、待っててね! あなたの卵子が赤ちゃんになるまで』


Illustrated by canmaru

「こんにちは、ママ。わたしは、卵子です」

この本、『ママ、待っててね! – あなたの卵子が赤ちゃんになるまで』の主人公はまさかの卵子です。その卵子ちゃんが「わたしのことを知っておいて欲しいの。わたし、自分のことをよく知っているのよ」と言って、ママに妊娠に関するいろいろなことを話していきます。

文章と絵にあたたかみがあって、小さい子どもが「今日ね、こんなことがあってね」と話している感じなので、「そうなのね」とうなずきながら読めるやわらかさです。所々に挟まれている卵子ちゃんからの手紙がママへの気持ちでいっぱいで、2つ、3つと読んでいくとだんだん卵子ちゃんが自分の子どもにみえてきて、よけいに「子どもが一生懸命なにか言っているのだから聞かなくちゃ」と思えてくるので、知らず知らずのうちに読み進めることができます。

ここまではよくある設定と言えばそうなのですが、この本がいわゆる癒し系の本と違うのは、卵子ちゃんが話している内容がかなり本格的であるということです。不妊治療のことを調べていると、FSHや主席卵胞、E2、AMH、減数分裂、桑実胚など普段は使わない言葉に圧倒されてしまいます。そんな時、卵子ちゃんの話をふわふわと聞けば大きな流れがわかりますので、その後の理解が早くなります。

今でこそ不妊治療は標準的な治療のひとつですが、もしご自身が、またはお近くに赤ちゃんはほしいけれども不妊治療で妊娠することに抵抗を感じておられる方がおられたら、ぜひ卵子ちゃんがこう思っているということを知ってほしいです。

「自然妊娠しか方法がなかったら諦めなくちゃならなかった。だけど、わたしが赤ちゃんになるチャンスがあるなら挑戦したい。だって、本当に大切なのはママに会うこと、パパに会うことだから!」

赤ちゃんがほしいと心を決めるためには、まず知ることが必要です。その最初の一歩としてよい本だと思います。

<参照>
■花岡正智 花岡嘉奈子、『ママ、待っててね! – あなたの卵子が赤ちゃんになるまで』、シオン