深い睡眠が脳の老廃物を除去する


Illustrated by 麦

脳から老廃物がどのように除去されているのかは長い間わかっていませんでしたが、2013年にロチェスター大学の研究チームがマウスを使った実験で睡眠中の脳内清掃システムを明らかにし、「グリンパティック・システム」と呼ばれるようになりました。脳は、普段は神経細胞とグリア細胞で埋め尽くされていますが、睡眠中はグリア細胞が縮んで神経細胞の周囲に大きな隙間ができるので、老廃物を洗い流すリンパ流もたくさん流れることができます。

そして、2019年に発表された論文によると、深い睡眠状態において、グリンパティック・システムが最も効率的に働き、心拍数が低くなるにつれて、清掃効果のある脳脊髄液の流れが大きくなることが確認されています。アルツハイマー病の原因のひとつに高いアミロイドβ濃度があると言われますが、睡眠の改善によってアミロイドβを含む老廃物がより効率よく除去できるのではないかと検討されています。

解毒の大切さは事あるごとにお伝えしていますが、睡眠は単なるリラックスではなく、脳の解毒に非常に大きな役割を果たしています。たやすく後回しにされてしまいますが、とても大切なことなので、これからもお伝えしていきたいと思っています。

<参照>
■Maiken Nedergaard et al., Sleep drives metabolite clearance from the adult brain, Science. 2013 Oct 18;342(6156):373-7. doi: 10.1126/science.1241224.
■Maiken Nedergaard et al., Increased glymphatic influx is correlated with high EEG delta power and low heart rate in mice under anesthesia, Science Advances 27 Feb 2019:Vol. 5, no. 2, eaav5447, DOI: 10.1126/sciadv.aav5447

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