東洋医学では、秋は収歛(しゅうれん)の季節です。夏は汗をかくので皮膚の表面が開いていますが、秋はそれが徐々に引き締まっていきます。ただ、暑さの残る秋の始めは皮膚の表面がまだ閉じきっておらず、朝晩に急に気温が下がると冷たい風が入り、体調を崩してしまいます。まだ暑いからと油断せず、体、特に下半身をあたたかく保つよう気をつけます。
酸味は収斂作用があり、汗を止め、気を降ろします。サンザシやザクロ、ブドウなどの酸味を取るとよいです。ブドウは補腎と補気の作用が強く、余分な水分を除去し、のどの渇きを癒します。
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秋は気持ちが落ち込みやすくなります。東洋医学では、体の中でうまく気が回っていないために気が沈むと考えます。ですから、うつの予防には肺の気を補い、歌やスポーツなど体を動かして気を回すとよいです。中国では多くの人々が秋にハイキングを楽しみます。秋の美しい景色を見に、山に登ったり、サイクリングをするのも楽しいです。
夏はたくさん汗をかき、汗と共に気も流れてしまうため、秋に肺の気が不足します。肺気虚になると、免疫力が下がって風邪を引きやすくなる、やる気がなくなる、集中力や記憶力が弱くなるといったことが起こります。
肺の気を補うには白色の食材、例えばダイコンや白菜、ネギの白い部分、タマネギがよいです。ギンナンには喘息を軽減する働きがあり、虚弱児の小児喘息には昔からギンナンが使われます。
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肺気虚によい漢方薬は、心肺機能を強くする紅景天です。漢方では、紅景天は体が軽くなって元気になる補気剤、そして心臓が強くなる薬として使われます。去痰の働きがある三子養親湯とあわせて使うとなおよいです。
3回にわたって秋の養生についてお話ししました。ひとつひとつは小さなことですが、積み重ねれば大きな力になります。
皆さまの秋が実り多きものとなりますように。どうぞ健やかにお過ごしください。