【Nutrition Reviews】タンポポの血糖低下作用


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2012年に『Nutrition Reviews』に掲載されたスペインの研究チームによる論文、「Diverse biological activities of dandelion(タンポポの多様な生物活性)」は、栄養素、食材、ファイトケミカル、薬理学的特徴など多様な視点からタンポポについて論じています。特に、結論部に「民間療法として長く使用されてきたタンポポは次々と科学データによってその効果が裏付けられ、エビデンスに基づいたものであるとの信用を得ている。現在のエビデンスは新しくタンポポが薬として市場に導入される土台となるであろう」とあるように、タンポポの薬理学的特徴については重点的にまとめられており、参考になります。以下、タンポポの血糖低下作用に関する箇所を要約します。

タンポポは血糖降下作用の作用機序を明らかにするための実験において研究されてきた。糖尿病では、高血糖は過酸化脂質を増加させ、抗酸化防御を減少させる酸化ストレスの原因となる。(1)ある種のタンポポエキスは膵β細胞からのインスリン放出を刺激し、血糖値を下げているようだ。また、タンポポエキス(40µg/mL)のインスリン分泌促進活性がINS-1細胞に見られたこともタンポポエキスの抗糖尿病薬としての可能性を示唆している。(2)

ストレプトゾトシン糖尿病ラットにタンポポ葉の水溶性エキスを投与すると肝臓のマロンジアルデヒド(MDA)濃度の減少と血清グルコース濃度の大幅な減少が観察された。(3)9.7%のタンポポの根を含む抗糖尿病の植物薬の血糖降下効果は、短期糖尿病の実験モデルにおける抗酸化防衛の大きな変化によって示された。(4)アロキサン誘導非肥満糖尿病マウスに乾燥させたエタノール抽出液を20mg/kg投与するとグルコースとフルクトサミンのレベルが大きく減少した。非肥満糖尿病マウスの別の研究では、初期糖尿病における酸化ストレスの指標とみなされるグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GSTs)とMDAの肝臓の濃度におけるタンポポを含む植物エキスの効果を評価した。植物エキスを20mg/kg用いて7日間治療したところ、GSTs濃度は大幅に上昇したがMDA濃度はほとんど減少しなかった。(1)以上のように、糖尿ラットにおける最近の研究はタンポポの有益性を示している。インスリン分泌促進剤としての働きを示し、血清グルコース濃度を減らすことが示されている。(5)

α-グルコシダーゼは膜結合型の酵素で小腸の上皮にあり、二糖がグルコースに分解する触媒として機能する。腸のα-グルコシダーゼを阻害する化合物は、理論上は、糖質の消化吸収を遅らせることができる。その場合、インスリンとは無関係に食後高血糖をコントロールできる。IC50sでタンポポ葉の水溶性エキス、2.3mg/mL、3.5mg/mL、1.83mg /mLをそれぞれパン酵母、ウサギの肝臓、ウサギの小腸由来のα-グルコシダーゼで実験を行ったところ、試験管内でα-グルコシダーゼを阻害した。(6)

1)Petlevski R Hadzija M Slijepcevic M , et al. Glutathione S-transferase and malondialdehyde in the liver of NOD mice on short-term treatment with plant mixture extract P-980191. Phytother Res.2003;17:311–314.
2)Hussain Z Waheed A Qureshi RA , et al. The effect of medicinal plants of Islamabad and Murree region of Pakistan on insulin secretion from INS-1 cells. Phytother Res.2004;18:73–77.
3)Cho SY Park JY Park EM , et al. Alternation of hepatic antioxidant enzyme activities and lipid profile in streptozotocin-induced diabetic rats by supplementation of dandelion water extract. Clin Chim Acta.2002;317:109–117.
4)Petlevski R Hadzija M Slijepcevic M , et al. Effect of “anti-diabetis” herbal preparation on serum glucose and fructosamine in NOD mice. J Ethnopharmacol.2001;75:181–184.
5)Schütz K Carle R Schieber A . Taraxacum –a review on its phytochemical and pharmacological profile. J Ethnopharmacol.2006;107:313–323.
6)Önal S Timur S Okutucu B , et al. Inhibition of α-glucosidase by aqueous extract of some potent anti-diabetic medicinal herbs. Prep Biochem Biotechnol.2005;35:29–36.

<参照>
■Marta González-Castejón et al., Diverse biological activities of dandelion, Nutrition Reviews, Volume 70, Issue 9, 1 September 2012, Pages 534–547, https://doi.org/10.1111/j.1753-4887.2012.00509.x, Published: 01 September 2012