音声の画面表示で難聴者との会話をスムーズに


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杏林大学医学部耳鼻咽喉科准教授、増田正次先生の報告によると、日本における老人性難聴の有病率は70歳以上の男性は5割を超え、女性は75歳以上になると6割を超えます。「音」に対する聴力低下、「言葉」に対する認識力低下、騒音下での聞き取り力低下が老人性難聴の特徴なので、高齢者に会話を理解してもらうためには大きな声でゆっくりと話し、騒音が少ない環境が望ましいです。とはいえ、外出時や大きな声での会話が憚られる状況もあり、何度も聞き直したり、わからないままでいるのは難聴の方にとっては大きなストレスになります。

9月4日に発売されたポケトークmimiはボタンを押しながら話した音声をリアルタイムに文字に変換して画面に表示するので、話して見せるだけで筆談ができます。これは難聴者とコミュニケーションを取る時に役に立つと思いました。最近は外国人のお客さまも多いことから、75言語に翻訳できるAI通訳機、ポケトークを使われる店舗も多いですが、このポケトークを日本語から日本語への翻訳に設定して耳が遠い人とのコミュニケーションに使われていることをメーカーが知り、専用機として開発されたのがポケトークmimiです。インターネット接続が必要ですが、電波が届く場所なら利用でき、2年間は契約や毎月の通信料は不要、また、購入前にレンタルできるのも使いやすい仕組みだと思います。

老人性難聴は単に不便というだけでなく、聞こえにくいことのわずらわしさから他人との関わりを敬遠するようになり、ひいてはうつの発症率増加につながることを示す研究もあります。ハンディを抱える方が少しでも毎日を過ごしやすくなるように新しい技術が使われることを歓迎します。

<参照>
ポケトークmimi
■増田正次、「高齢者の難聴」、日老医誌 2014;51:1―10

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