伝え方が大切


Illustrated by すずしろ

カウンセリングをされている方は、言葉づかいにはとても気を使われていますが、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』の中に、カウンセリングの際につい口にしてしまうのではないかと思われるひと言、「私も同じだからわかります」がありました。

相談されたときに「あなたに共感している」ということを伝えたい気持ちから出る言葉で、もちろん悪意などありません。ただ、「わかります」と言われると、言われた方は今、その状況の中で苦しんでいるのに、「あなたの状況は結構、よくあることだから」と軽くまとめられたように感じるため、「よけいなひと言」になるのではないでしょうか。

著者はこれを「そういうことがあったのですね。私も似たようなことがあって、わかる気がします」と言い換えたらよいと提案しています。カウンセリングにおいては「同じ体験はできないし、同じ気持ちにはなれない」という前提に立たないと依存関係を作り出してしまいます。「同感」ではなく「共感」、すなわち「同じではないけれどもわかるような気がする」と言われたら、尊重されていると思うとのことです。

もちろん、これは著者によるひとつの提案であって、このまま真似をしろというものではありません。言葉は「誰が」「どんな状況で」「どんな文脈で」言うかが重要です。ただ、もし自分の口癖に「よけいなひと言」があるのなら、それはどう思われる可能性があるのかということを知っておくのは有用であると思います。

<参照>
■大野萌子、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』、サンマーク出版