発達の遅れと生殖補助医療技術


Illustrated by yoshikun

不妊治療で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて発達の遅れの頻度が高いと言われていることに関連して、千葉大学の研究グループは『Reproductive Medicine and Biology』に掲載された論文で、発達の遅れに生殖補助医療技術は直接関係しないことを報告しました。

同研究グループは77928組の母子のデータから、3歳時点の「コミュニケーション(言葉の理解や話すこと)」「粗大運動(腕や足など大きな筋肉を使う動き)」「微細運動(手指の細かい動き)」「問題解決(手順を考えて行動するなど)」「個人と社会(他人とのやり取りに関する行動など)」を調べました。

その結果、体外受精、顕微授精、排卵誘発、人工授精などの不妊治療で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、3歳時点で発達の遅れが疑われる子どもが多いことが示されました。

しかし、多胎妊娠、年齢や基礎疾患などの不妊要因、子どもの性別、妊娠合併症、胎児の発育不良の影響を取り除いて解析したところ、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、不妊治療で生まれた子どもの発達の遅れのリスク増加は認められませんでした。

また、凍結胚移植や胚盤胞移植により生まれた子どもも、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、発達の遅れのリスク増加は認められなかったことが報告されています。

よって、同研究グループは、子どもの発達遅滞は生殖補助医療技術ではなく、親の年齢など不妊にかかわる要因と多胎妊娠によって引き起こされる可能性を示唆しています。

<参照>
■Takao Miyake et al., Neurological development in 36-month-old children conceived via assisted reproductive technology: The Japan Environment and Children’s Study, Reproductive Medicine and Biology, First published: 12 April 2022 https://doi.org/10.1002/rmb2.12457
■国立大学法人千葉大学、生殖補助医療により生まれた子どもの神経発達について~約78,000組の親子のデータを解析~子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)、2022年4月20日